2013年01月13日

『アパート経営はするな!』という本

この本は去年の新聞広告で知りました。アパートオーナーにとってセンセーショナルなこのタイトルに惹かれ購入しました。
何が書かれているかというと、結論だけ言うと、
・今からのアパート経営は必ず赤字になる。
・相続税対策にはアパート経営…という節税マジックから覚醒し、遊んでいる土地は即刻売って現金化せよ。
ということが書いてありました。
これは著者の考えであって賛否両論あってしかるべきですが、私がここで言おうとしているのはこのことではありません。

皆さんは、バブルのころに不動産市場を席巻していたワンルームマンション投資のマルコーという会社をご存知でしょうか?私は知らなかったのですが、読んでいるうちにこのマルコーという会社がレオパレスとオーバーラップしてきたのです。



  アパート経営はするな!−賃貸経営の落とし穴− (須田忠雄・著 大空出版)
    〜第四章から抜粋〜

1980年代不動産投資は資産形成のエースでした。中でも絶大な人気を博したのが「マンション投資」で、その一大ブームを築いたのがマルコーのリースマンションだったのです。
リースマンションとは、最初からリース(賃貸)することを目的に建てられたマンションを言います。
それまで一般庶民にとっての不動産は、自分の家であり生活の場でした。マンションを投資の対象、資産形成の手段と考えていたのは一部の富裕層のみ。平均的なサラリーマンにとってのマンションはマイホーム以外の何ものでもありませんでした。
そうしたマンションの概念をガラッと変え、”マンション投資”という分野を切り開いたのがマルコー社長の金澤正二氏であり、彼が開発した「リースマンション」という商品(システム)だったのです。
リースマンションの最大の特色は、一般のサラリーマンや主婦でも準備できる少額の資金でマンションのワンルームを購入できることにありました。
リースマンションの頭金は、最低、購入価格の5%からです。”頭金5%でOK!”と大きく書かれたマンション販売の広告が、当時の新聞や雑誌を席巻していたのです。
たとえば1200万円のマンション(1DK)の場合、5%の60万円を頭金として支払えば購入できました。
これなら20代のサラリーマン、主婦、いや学生にも手が届きます。リースマンションでなかったら、当時の相場としてやはり購入価格の4分の1程度の300万円は必要としたでしょう。実に5倍の開きがあります。働き盛りの中高年サラリーマンの中には、年2回のボーナスを全部つぎ込んで複数戸購入した人が多数出ました。
「頭金の60万円を支払ったとして1140万円が残る。しかも何戸も買うなんて、よく銀行がローンを組んでくれたね。」
と、今なら誰もが思います。それも、自分が住むための不動産ではなく、金儲けのためのマンション投資とわかっていて。いくらバブルの絶頂期とはいえ、仕事を持たない主婦やまだ社会的信用のない20歳代の若者にも貸すなんて、銀行さんもどうかしていたんじゃないかと、皆さんも首をかしげるでしょう。
でも、あの当時、本当にそういうことが銀行で普通に行われていたのです。
上場企業の課長職以上なら無担保で2億円貸す――そんなことがまことしやかにささやかれていた時代が確かにあったのです。
なぜそんなことがまかり通ったのか。言うまでもなく、当時は「土地神話」が広く信仰されていたからにほかなりません。

さて、マルコーのリースマンションには「5%の頭金」のほかに、もう一つのセールスポイントがありました。それは、「管理の手間が無用」ということです。
一般の賃貸マンションを第三者に貸す場合、入居者募集、賃貸契約、家賃回収・管理、契約更新などの手間が発生します。こうした入居後の一切の管理業務は、リースマンションオーナーの独身サラリーマンや主婦などが最も苦手とするところです。
ところがリースマンションの場合、オーナーがこれをする必要はありません。代行手数料(家賃の10%程度)を払うことで、こうした面倒な管理業務を一切セットにして、マルコーの管理会社が引き受けてくれるのです。しかもその中には、空室や家賃滞納が発生しても、毎月一定の賃料をマルコーがオーナーに支払うという借り上げ契約も含まれていました。
ここまで書けば、もう私が何を言いたいかおわかりでしょう。
マルコーのリースマンションシステムは、今日の賃貸経営業者の賃貸経営システムと酷似しています。
金融情勢が異なり、金利も当時とは雲泥の差なので、頭金5%については無理な注文です。しかし、一括借り上げシステムについえは同じ。というか、マルコーのリースマンションは今日の賃貸経営システムの原点なのです。事実、今日の賃貸経営会社の幹部社員の中には、マルコー出身者が少なくないのです。

マンション投資といえばマルコー、マルコーといえばマンション投資。一時期の勢いは、それこそ飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
隆盛を極めたマルコーのリースマンションですが、バブルの崩壊とともにあっけなく消え去りました。
1991(平成3)年、マルコーは会社更生法の適用を受け倒産したのです。
被害を被ったのは、かなり背伸びしてマンションを購入した若き不動産オーナーたちです。会社は倒産してしまえば、会社自体が消滅するのですから、清算し切れず残った債務は帳消しになります。
しかし、個人の場合はそうはいきません。マルコーが倒産しようがしまいが、そのマンションの一室を購入したのは自分です。銀行から住宅ローンを借り入れたのは自分です。リースマンションの場合、頭金が5%と最少金額だったため、彼らはその後20年間のローン返済を余儀なくされたのです。
「ちょっと待ってくれ。一括借り上げ契約を交わしたじゃないか。空きが出ても家賃滞納が生じても、一定の賃料を保証してくれる約束じゃないか。会社は倒産したけど契約は生きてるんじゃないの。」
全国の不動産オーナーは一斉に声をあげました。しかし一縷の望みも、更生管財人が借り上げ契約を解約、賃料支払いをストップしたことで潰えました。
その結果、複数戸所有していたオーナーは、ローン返済ができなくなり、自己破産を申請した人が続出しました。中には、銀行への担保として差し出していた親の実家まで、競売にかけざるを得なかった人もいました。
このように、一括借り上げはオーナーにとってとても魅力的なシステムで、賃貸経営しようかどうか迷っている背中を強く押してくれますが、会社が潰れてしまえば何の価値もありません。
賃貸経営の会社が大手でも、上場企業であったとしても、倒産しない保証はどこにもありません。私たちはマルコーのリースマンションの教訓を忘れてはならないのです。



いかがでしょうか?
もちろん、マルコーとレオパレスが同じ運命をたどるとは限りません。
レオパレスと酷似した業態が倒産した前例があったということ、会社更生法の適用後契約解除になったということをお伝えしたくてペンをとりました。
posted by 水色ワイン at 13:07| Comment(13) | アパート経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする